10Gへのジレンマ:ユーラシアのNSPはオープンなCPEテクノロジーにより、ブロードバンドアクセスの多様なオプションへの対応を準備

ブロードバンド
2022年第2四半期
光ファイバー

ブロードバンド接続に関していうと、CATV事業者、通信事業者、マルチサービスオペレーター(MSO)などのネットワークサービスプロバイダー(NSP)において加入者に高速アクセスを確実に提供するためのオプションがこれまでになく多様化しています。ほぼ毎日のようにギガビットパッシブ光ネットワーク(GPON)の大躍進が発表される中で、ケーブルもDOCSIS 3.1によって大きな進歩を遂げていますし、5G固定ワイヤレスアクセス(FWA)も同様です。

 一般的には選択肢があることは好まれますが、NSPの場合、さまざまな選択肢があるということは、戦略的、運用的、技術的な観点から管理を必要とする新しいレベルの複雑さを伴います。地理的および地形的にさまざまな環境にいる加入者のニーズを満たすために、複数の高速ブロードバンド技術を組み合わせるNSPが増え続け、多様化は特に顕著になっています。そして、NSPリーダーは「いつどのように最高のブロードバンドテクノロジーを選ぶべきなのか」という、興味深いジレンマを生み出しているのです。

 こうした決定を左右するオプションや条件を探るべく、テクニカラー・コネクテッドホームのユーラシア事業部門シニアVPであるMercedes Pastorに話を聞きました。以下がその見解です。

Q:高品質のブロードバンドアクセスを要求する加入者のために、10Gのジレンマが生まれることについてどのように考えますか?

 Mercedes Pastor:現在、一般的なユーラシア市場は1Gのカバレッジが広く、2.5Gの接続性が支持を集めつつあります。最終目標の10Gに達するには、住宅、企業、卸売の各市場をカバーするために、複数のテクノロジーと複数の製品の共存を必要とします。

そういった意味では、10Gのジレンマは、市場にいるほとんどのNSPにとってすでに現実のものとなっているのです。近年、特にパンデミックを通じて、デジタルに依存する社会の期待に応えるために、業界は多様な高速アクセス技術を選択する際に、高いレベルのクリエイティビティを示してきました。

加入者に提供されるブロードバンドアクセスサービスがサービスプロバイダーの分類で決まっていたのは、それほど昔のことではありません。CATV事業者はDOCSIS規格の下で進化した同軸ベースのサービスを、通信事業者は利用可能なインフラストラクチャに応じて、デジタル加入者線(XDSL)またはFTTH(ファイバー・トゥ・ザ・ホーム)を、ディッシュアンテナを利用する事業者は衛星接続を提供していた、という具合です。

しかし今日では、プロバイダーコミュニティの分類によってどのブロードバンドアクセステクノロジーを提供するか、境界線があいまいになっています。CATV事業者はGPONの可能性を模索しており、RDK-Bの標準化コミュニティはCATV事業者の境界を超えて機能を拡張してきています。また、誰もが5G FWAを活用できる状態にあり、従来の地上系ネットワークでは効果的に対処できないギャップを埋めることができるのです。NSPは、より幅広いスキルセットの獲得を余儀なくされています。

これにはいくつかの理由があります。

1つ目は消費者行動です。パンデミックによるロックダウンの結果、多くの人が自宅で仕事をするようになりました。これは、NSPがビジネス目標を戦略化および管理する方法に多大な影響を及ぼしています。2020年には、家庭のブロードバンド消費量がパンデミック前と比べて、1人あたり60%増加しました。さらに最近の報告によると、2022年にはパンデミック前と比べて、1人あたり71%増まで達しているとされています。つまり、私たちがニューノーマルを生きていること、そして、NSPが信頼性の高い高速接続を家庭に提供し続ける必要があることを意味しています。

2番目の要素はコストが中心となります。あらゆるクラスのサービスプロバイダーに向けて、主要なブロードバンドテクノロジー(ケーブル、ファイバー、5G FWA)が揃った中、各NSPはコストとパフォーマンスの観点から、複雑かつダイナミックな市況において、どのテクノロジーが最適かを注意深く分析する必要があります。将来的に10G(または少なくとも高速通信)の要件を扱う必要があるNSPネットワークをアップグレードするための、投資の計画と実装の方法も変わってきます。

Q:ユーラシア大陸全体のコネクテッドホームに10G接続が提供される優先順位をどのようにつけますか?

Mercedes Pastor

すべてのNSPにとっての正解などはありません。市場の人口統計、人口密度、地形は、多くの決定を導くのに役立つでしょう。そうは言っても、多くのNSPは最終的に10Gへの道のりとして、ハイブリッドを追求していくのではないかと思います。

複合的なアクセス技術により、消費者に高速ブロードバンドを提供できるからです。たとえば、CATV事業者はDOCSIS 4.0を展開する一方で、通信事業者はGPONテクノロジーの進歩を追求することができます。

CATV系と通信系のNSPが既存のネットワークを補完しつつ、新しい市場に急速に拡大していくために、5G FWAをどのように採用し始めているかを見るのは興味深いことです。しかし、5G FWAは大規模なファイバーまたはケーブルインフラストラクチャを持っていないNSPにも、新しい破壊的なプレーヤーとしてブロードバンドのコネクテッドホーム市場に参入するための扉を開いています。

地上ブロードバンドアクセスを5G FWAと統合して、強化された超高速のエクスペリエンスを消費者に提供している興味深い例もあります。このようなテクノロジーの組み合わせにより、医療、ゲーム、拡張現実、没入型教育など、帯域幅を大量に消費するアプリケーションについても、対応可能な市場が促進され、最大化されていくでしょう。

米国は、VerizonとT-Mobileによる広範な展開を背景に、5Gの普及率で先行しています。欧州は、まだ5G FWA導入の初期段階にあるため、そう近い将来には、コネクテッドホームに接続を提供する主要なテクノロジーにはならないでしょう。ただし、ユーラシア大陸全体では、5Gが低密度の農村地域のファイバー展開を補完するものになると期待しています。

DOCSIS 4.0は、10Gの速度に対応したがっているCATV事業者にとって自然な進化と言えます。CableLabsがこのテクノロジーをリリースしたのは2020年3月ですが、商的流通の準備を整えるための予備トライアルがリリースされるまでには、まだ数か月かかるでしょう。ここで論点とすべきなのは、CATV事業者がDOCSIS 4.0でこのまま自然な進化を続けるのか、それとも、ファイバーテクノロジーへの投資を補完するために利用するのかということです。

すべてのネットワークがすぐにファイバーテクノロジーに進化すると考えるのは現実的ではありませんが、ネットワーク内のさまざまな要素をサポートするために、より複雑なアーキテクチャを備えたエコシステムが増えていくことでしょう。アーキテクチャを整えていくことは、消費者に統一されたエクスペリエンスをもたらすための重要な要件になります。

 欧州およびアジア市場では、もはやファイバーを導入するかどうかに選択の余地はありません。銅線ネットワークの大部分は、ファイバーに向かって急速に進化しています。ファイバーはラストワンマイルの接続性をカバーするために急速に展開されているのです。

Q:住宅内のローカルエリアネットワークのワイヤレス接続はどうなりますか?

Mercedes Pastor

これは非常に重要なポイントです。ネットワークとCPEの間の速度が上がるにつれて、家庭内でのサービスの提供方法も改善する必要があるからです。Wi-Fi 6は、家庭内のワイヤレス接続の事実上の標準になりました。ただし、間もなくWi-Fi 7が登場し、2023年後半から2024年にかけて際立ってくると予想されます。

家庭内に高速アクセスをもたらすだけでは十分ではないため、こうした一連の進展が非常に重要になります。NSPに対しては、家庭内のシームレスな接続を確保および管理するというプレッシャーが増しています。10G接続という目標に近づくにつれて、ワイヤレス接続はさらに重要になってくるでしょう。

10Gベースのアプリケーションでは、より高いデータスループットだけでなく、より低いレイテンシも必須です。コネクテッドホームのLANおよびNSPのWAN環境全体において、高いパフォーマンスを実現する必要があるということです。NSPは、10Gの速度でインターネット環境に接続する消費者に向けて、容量、効率、セキュリティを提供できる最適なポジションにあると言えます。

このことは、クラウドコンピューティングなど、最高レベルの帯域幅を必要とする新しいサービスをサポートする上で大きな前進となり、また、成長を続ける複雑なデバイス環境への接続を提供しながら、新しい高品質の動画サービスをサポートすることも可能にします。

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