過去数年間に渡り、セットトップボックス(STB)テクノロジーには、コネクテッドホーム利用者のニーズの進化に対応していくため、設計と展開の方法に大きな変化が見られるようになってきました。選択や管理の余地を好む新しい消費傾向により、ネットワークサービスプロバイダー(NSP)は、独占的な顧客構内設備(CPE)戦略の有効性を見直して、よりオープンなアプローチで新しいSTBの価値を市場に提案するメリットを探求するようになりました。
テクニカラー・コネクテッドホームのビデオ製品ユニット担当シニアVPであるChristian Lefebvreに、STBの進化を推進する新たなトレンドについての見解を聞きました。
Christian Lefebvre:世界の消費に関しては、エンターテインメントとメディアは過去5年間で着実に増加しており、Covid-19パンデミックにより2020年にはさらに加速しました。OTT専用サービスとビデオゲームは、消費の面で上向きの動きが続いています。一方、従来のテレビ視聴はわずかに減少しています。
消費者の半数は引き続きリニアTV番組の視聴がメインですが、若い世代はサブスクリプション、OTTサービス、ゲーム、ソーシャルネットワーク、eスポーツに移行しています。いずれもオンデマンドで呼び出すことができるものです。
テレビは依然として家庭用のコンテンツ消費端末として人気ですが、携帯電話が急速に普及しており、消費傾向が進化し続けるにつれて注目すべき分野になるでしょう。
Christian Lefebvre: エンドユーザーは家庭での新しいサービスや体験について非常に要求が高いので、NSPはトレンドを予測するために迅速に行動する必要があります。変化のペースの速さと好みの急変の多さは、複数年にわたる製品やサービスの開発プロジェクトがもはや選択肢ではないことを意味しています。消費者は、新しいアプリケーションとサービスについて聞いてから、6か月以内に手にすることを期待しています。つまり、今日のイノベーションイニシアチブは、市場投入までのスピードと緊密に結び付いている必要があります。
その結果、NSPはビジネスモデルを進化させ、既存のOTTサービスに加えて、付加価値と付加サービスを消費者に提供しようとしています。これにより、複雑で競争の激しい状況が生まれています。消費者の心をめぐって、NSP同士でも破壊的なOTTプレーヤーとも、激しい戦いを繰り広げているのです。それと同時に、ストリーミングプロバイダーやペイTVオペレーターとパートナーシップを確立する機会も創出しています。
上手くいけば、これは勝利の組み合わせかもしれません。ストリーミングプロバイダーは、加入者へのバリュープロポジションを強化し、解約を減らしながら、ペイTVの既存視聴者にアクセスできるのです。NSPとペイTVの関係というものは、過去には敵対的であったため、これはエキサイティングな前進と言えます。現在、経営幹部の多くが協力に利点を見出しています。
はるかに豊富なコンテンツとサービスにアクセスできるため、消費者が一番の勝者です。
しかし、前進するにつれて、やはり問題となってくるのはスピード感です。新しいパートナーシップをどれだけ迅速にまとめて、魅力的な新しい付加価値サービスを提供できるかが焦点となります。
Christian Lefebvre: STBは、ビデオを視聴するための主要な家庭内デバイスとして機能しますが、家庭内のコンテンツとサービスの複雑化を管理する上でも、重要な役割を果たすことができます。
エンドユーザーのエクスペリエンスを向上させ、音響と映像のクオリティを向上させることは、顧客離れを減少させる要因として非常に重要です。その結果、NSPはSTBにさらに多くの機能を要求しています。
最新のSTBは、将来のコネクテッドホーム環境において存在意義を維持するために、4つの主要な領域に集中する必要があります。
新しいサービスを常に導入することによって引き起こされる問題は、何らかの方法で管理する必要性があります。標準ベースのプラットフォームに新しいイノベーションを統合するためのオープンなアプローチは、このような問題に対処できます。
新しいサービスによって主要な依存関係が乱される場合、消費者にはデジタルライフの複雑さを管理するためのオプションがあります。
両方のアプローチとも市場がありますが、2番目のオプションは、NSPが加入者との関係を再定義および改善するためのまたとないチャンスになります。
NSPは、STBなどのCPEを通じて家庭内に築いた存在感を活かし、加入者のコンテンツ、プライバシー、セキュリティを統合、最適化、保護するマネージドサービスを提供できるのです。
Christian Lefebvre: NSPは、エンドユーザーとつながるために、提供されるコンテンツとエクスペリエンスをある程度コントロールする必要があります。また、ユーザーと環境の相互作用を収益化するためには、人々が何を見ているかを認識し、消費行動をモニタリングする必要があります。
テクニカラー・コネクテッドホームでは、消費者がSTBをどのように使用しているかをNSPが理解できるように、一連の高度な分析機能を開発しました。この知識を得ることは、エンドユーザーのエクスペリエンスを改善し、加入者の解約を減らすための重要なステップです。NSPはこれらの分析情報を利用して、新しいコンテンツ、サービス、テクノロジーの開発状況を案内したり、通知したりすることができます。
たとえば、テクニカラーでは、高度な分析サービスからの情報を活用して、NSPが完全な音声制御のSTBを開発できるようにしました。このデバイスは、消費者から非常にポジティブなフィードバックを受けています。
こちらで独占記事をお読みいただけます: THE POWER OF VOICE (英語)
Christian Lefebvre: セキュリティは複数のレベルで懸念されています。NSPは、コンテンツのセキュリティを確保し、ビデオライブラリの所有者向けに著作権侵害対策イニシアチブを実装すると同時に、加入者の個人情報とプライバシーを保護するために、追加のセキュリティ対策を講じる必要があります。
また、クラウドゲーム、IoT、バンキング、バーチャルヘルスアプリケーションなど、さまざまな分野で新しいOTTサービスが急増しており、これらすべてに堅牢なセキュリティ対策が必要です。
しかし、本当の核心となる問題は信頼です。NSPが一連のマネージドサービスを展開して収益化し、消費者のデジタルライフの多くの未確定部分に対処したい場合、「信頼」が主要な成功要因になるのです。
セキュリティが侵害されると、信頼が失われ、ブランドはダメージを受けます。NSPにとって、重大なセキュリティ違反から回復するのは難しいでしょう。
オープンプラットフォームを使用するNSPには、3つの重要な機会がもたらされます。
これらの3つの領域は、NSPが新しいサービスを収益化するための素晴らしい機会を提供します。また、テクニカラー・コネクテッドホームが世界中のNSPのパートナーとして選ばれることを目指して、研究、設計、開発に注力している重要な分野でもあるのです。